つくば運動公園計画-住民投票に行こう

8月2日は、つくば市総合運動公園の基本計画の賛否を問う住民投票です。

スポーツを核とした街づくり つくばスマート・ベニュー構想

はじめに

小中学生の大会のために巨大なハコモノは不要なだけでなく邪魔であることは自明です。どういう投資をすればスポーツでつくばを活性化できるのかについて考えたい。つくば市総合運動公園の基本計画は、この収益化の部分が杜撰極まりない。いや杜撰以前に、本当に何も考えていない。

つくばスマート・ベニュー構想

 つくばを魅力的な街にして住民誘致(若くて稼げる住民にどんどん移住してもらう)という目標と、そのためにスポーツを核とする街づくり戦略自体は有望です。

スポーツ施設が経済効果を生むためには収益性の確保が必要です。そのためには興行を魅力的にしなくてはならない。ハコモノを作るだけでは人が来てくれるわけがありません。日本全国に山ほどの失敗例があります。つくばには、研究学園、万博記念公園、みどりのTX駅前に広大な土地がある首都圏の近隣地域としては稀有の立地条件です。成功した先例に学ぶ必要があります。収益性確保には、以下が必要。

  1. 魅力的な興行
  2. 立地が良く集客が容易(公共交通機関が利用できること)
  3. 物販・飲食が可能など収益源の多様化

「スマート・ベニュー」は株式会社日本政策投資銀行登録商標(商標登録第5665393号)です

魅力的な興行には何があるか?

文化芸術系は難しい

つくばの場合、TXを利用して容易に首都圏の有名アリーナに行けます。好きなアーティストのライブが見放題の現状では文化芸術系をターゲットに入れることは難しい。

※逆に仙台のような地方の中心都市では文化芸術系のイベントは極めて有望で、設備を多用途に使えるような投資に意味があります。

地域密着型プロスポーツが唯一の可能性

つくば市の財政規模で国際的なスポーツ大会を誘致するのはそもそも無理です。国内のトップの大会ですら絶望的です。しかも収益性には問題がある。日本陸上選手権や日本水泳選手権は素晴らしい大会ですが収益性はないのです。2019茨城国体の開催は決まっていますが、国体で経済が活性化したという話はありません。魅力的な興行となる可能性があるのは、サッカー(つくばFC)、バスケットボール(つくばロボッツ)、バレーボール(サンガイア)などの地域密着型のプロスポーツに絞られるでしょう。

事業主体と運営主体

今回の基本構想、基本計画を見ただけでも、つくば市事業・運営主体となるスポーツ施設の未来は絶望的です。収益性のことは、ほんの少しも考えていない。Jリーグでもこのような「税金で建設する利用者不在、収益性無視の一点豪華主義型スタジアム」は厳しく批判しています。

(参考) Jリーグスタジアム標準 事業主体と運営主体

わが国のサッカースタジアムの多くは、都市公園施設とし て公的な機関が事業主体となっているケースが多くみられま す。当然事業手法も、都市公園事業として、補助事業が導入されることになります。都市公園事業であるが故に、地元自治体が建設主体で、国の補助基準などによって、施設の整備水準や予算枠まで束縛されます。 この弊害は、利用者不在の施設計画になりがちになること です。

f:id:commonsense298:20150711080201j:plain  ガンバ大阪の新スタジアムが提示する新しい公共

サッカーJリーグガンバ大阪の新スタジアムの建設手法(寄付)が話題です。

  1. 140億円の建設費の全額を寄付(TOTO助成30億円を含む)で賄い、出来上がったスタジアムを大阪府吹田市に寄付する
  2. ガンバ大阪が指定管理者となり、運営費・大規模修繕費・撤去費用(10億円)・地代(年額1.5億円)のすべてをガンバ大阪が払う

吹田市は、このガンバ大阪の新スタジアムを核とした街づくりをして、地域の活性化を図る。

つくばFCつくばロボッツ、サンガイアのプロチームを、どのような事業と運営でサポートし「育てて」いくのか、徹底的に話し合い、知恵を出し合っていきましょう。民間の知恵を入れるためには民間資金の導入は絶対に必要です。つくば市や現在の市議会による投資があまりにも無責任な収益性無視のものであることは今回の騒動で明らかです。

そのためにも立地が悪くハコモノありきの現在の基本計画は、圧倒的な投票率と反対多数で葬り去らなくてはなりません。駅から 8km の立地でプロスポーツチームが育つ理由がありません。

スポーツを核にした街づくりにも貢献しません。例えば、つくばマラソンは参加者が減少するうえに、東京圏からの直行バスでの参加が主体となり地元経済への寄与が消滅する可能性が高いです。

 

f:id:commonsense298:20150717144410j:plain   MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

新広島球場(総事業費145億円)は多くの人の知恵と協力で出来たスタジアムです。プロ野球77日、アマチュア野球42日など、稼働実績も十分。

事業のスキーム

広島市営ですが、総事業費145億円のうち、広島市の負担は23億円のみです。広島球団を指定管理者ですが、広島市は2億3000万円の維持費を負担しています。広島球団は三井物産と提携し、飲食物(20億円)やグッズ(20億円)の販売にも収益源を求めています。

事業費の負担割合

用地費55億円は、球場使用料52億円、国庫補助3億円

建設費の90億円の内訳は以下の通り

  1. 広島市が23億円
  2. 広島県が11.5億円
  3. 広島の財界からの寄付が11.5億円
  4. 国からの補助が7億円
  5. たる募金(市民からの募金)が1.2億円
  6. 残りの36億円は球場使用料

ネーミングライツ5年15億(2009年)5年11億円(2014年)は大規模修繕費の財源なので収支には入っていません。

球場の運営費の資料

 

f:id:commonsense298:20150717150846j:plain  ゼビオアリーナ仙台

スポーツ用品販売のゼビオによって建設・運営される民営のアリーナ。4000席を持ちプロバスケットボールの仙台89ERSの本拠地。建設費は30億円。URから20年の事業用定期借地権で土地を借りている。ちなみに3ヘクタールの土地は実勢価格50億円。土地を返す時には更地にする契約であることからアリーナの耐久年数も20年で設計されている可能性が高い。仙台市は固定資産税の5年間分に相当する額を補助するだけ。